原発事故

* 備忘録的なメモ・ページです

● 福島原発事故の汚染は? 海のサカナと東京湾 (2014-10-13)

中部大学・武田邦彦教授のブログより転載
引用元: http://takedanet.com/2014/10/post_66d2.html

断片的ですが、東京新聞に東京湾の汚染の記事がでたところで、ざっと現在の汚染状態をサカナなど海に絞って整理しました。

まず、食材のなかで相変わらず危険なのは魚ですが、その中でも、もっとも危険なのは福島産の近海魚です。

最近の測定を見ても(おおよそ1キロ40ベクレル程度が危険か、安全かの目安です)、スズキが多いもので、500ベクレル、ヒラメ120ベクレル、マコガレイ180ベクレル、マダラ60ベクレルというところで、海岸線のすこしそこの方を泳いでいるサカナ(やや白身系)が高い値を示しています。

福島県以外では茨城産にときどきギリギリ(40から50ベクレル)のものがでますが、「危険な魚」というと「福島産」ということになるでしょう。

市場に出ている魚は「1キロ100ベクレル以下」で規制していますが、これは「空気中や地面、また他の食材からの被爆がゼロの場合」であり、つまり西日本とか外国に住んでいる人でしたら、福島原発の影響を受けていませんから、「食材だけ」で良いのですが、東北、関東にお済みの人は空気中の汚染や地面からの再飛散である程度の被爆を受けていますから、私が計算すると食材は1キロ40ベクレルが限度になります。

また放射性物質は小さな魚から大きな魚に移ります。チェルノブイリ原発の事故の時に太平洋にかなりの放射性物質が降ったのですが、ちょうど3ヶ月ごとに小さい魚から中型へ、中型から大型へと移りました。しかし、福島の場合は小型の魚の汚染が桁違いに大きいこともあって、ブリが3ベクレル、マグロが1ベクレル、そして今が旬のサンマはあまり汚染されていません。

サカナの間を移動しているのは確かなのですが、今回の海の汚染は極端に大きいので、これまでのデータとは異なった傾向が出ていると思われます。

このように魚が汚染されているのは、海が汚染されているからですが、最近、東京新聞が東京湾の汚染状態の調査結果を公表しました。それによると、東京と千葉の境の場所で1200ベクレル(1キログラムあたり)、荒川河口で400ベクレル程度でした。

また東京湾は広く40ベクレル程度の汚染ですが、それを東京新聞は「中心部は汚染が低い」と表現されていました。たしかに1200ベクレルとか400ベクレルに対しては低いのですがもともと原発で使ったものを外に持ち出すときには1キロ100ベクレルが限度で、それを超えたものを扱ったら、1年以下の懲役か100万円以下の罰金です。

東京湾を管理している都知事やそこに汚染物質を移動してきたがれきの運搬業者などは本来なら逮捕されたり、裁判を受けたりする、そういう状態であるということです。

今回はまずは現在の状態を簡単にまとめました。原発に関する記事は「まぐまぐ」に集中的に出しています。

(平成26年10月13日)
武田邦彦


● 原発事故の現状 (2014-09-15)

原発事故については「まぐまぐ」に詳しく連載していますが、ここに簡単に原発事故の現状をまとめてみました。なにしろ福島原発から漏れた放射性物質の量は100京ベクレルと言われ、広島に投下された原子爆弾で汚染された量の約200倍ですから、なにが起こるかかなり長期、慎重に観察していかなければなりません。

まず、被曝による病気などの状態ですが、初期の鼻血や喉のイガイガ、疲労感などは最近ではあまり報告されず、子供の甲状腺の肥大や甲状腺がんが多く報告されています。甲状腺がんはこれまで研究が少なかったこともありますが、すでに100人ほどの子供がガンと診断され、約半数は手術をしたとされ、転移が見られる子供さんもおられるようです。

評価はむつかしいですが「かなり多い」という感じでしょう。甲状腺がんが本格的に増えるのは2015年以降と考えられ、今となっては初期被爆は減らすことができませんから、患者さんが少ないことを祈るばかりです。

また、二本松市など福島の市で人口が流出した人口より減ったところも多く、これが統計上の問題なのか、それとも本当に死亡率が増大しているのか、まだ不明です。

また除染も進んでいませんし、一部は避難区域が解除される動きもありますが、放射線量は原則として100年はそれほど変わりませんから、福島の人には悪いのですが、「それが原発事故、原発というものだ」ということなので、それに応じて生活設計をする以外に方法はありません。

食材は山のものを別にすると、かなり改善されてきました。その一部は、これまで福島の食材を食べようという運動が展開されたので、食材にまじって全国に薄く拡散したものと思います。つまり、セシウムも他の放射性物質も「なくなる」ということはないので、福島の農作物の汚染が減るということは、雨で海に流れて魚に沈着するか、食材とともに全国に薄くまかれるかしか方法がないのです。

また、朝日新聞の誤報でさらに有名になった吉田所長の調書に「東日本が崩壊するかと思った」とあるのは、彼も原発が、原子爆弾などよりはるかに膨大な放射性物質を抱えていて、福島ばかりではなく、東日本全部が壊滅する不安を持っていたことがわかります。

また政府要人の調書も公開されていますが、一様に「びっくりした」様子がわかります。それは「原発は危険だから僻地につくるが、事故は想定しない」という矛盾した政策がもたらしたものです。このことは川内原発をはじめとした再開される原発でも同じことですので、また数10年に一度は原発が爆発し、少しずつ日本は原発が原因して衰退していくでしょう。

その理由の第一は、再開される原発も、原発を安全に保つ二つの重要なシステム「固有安全性と多重防御」ができていないまま再稼働 しようとしていることです。つまり、「地震と津波」は外から原発に加えられた打撃であり、それを受け止める原発側の対策の欠如がそのままになっているからです。

そして第二に、東京の電気を新潟で作っているのに、東京の人は安全というという二枚舌の状態にあることです。これは「原発を推進しなければならない」、「しかし、原発は危険である」という矛盾を正面から受け止める立派な政治家も科学者もいないことを意味しています。

このような状態ですから、国民としては再開を止めること、食材に注意すること、健康に留意しできるだけ免疫力をつけておくことなどが必要と思います。地面からの再飛散は減ってきました。

(平成26年9月15日)
武田邦彦


● ガリレオ放談 第76回 事故時の規制値 (2014-05-07)
https://www.youtube.com/watch?v=LCFScacTnxo&index=10&list=PL710E0449FC7641FF


● お母さんのための原発情報  (やや緊急) 〜 サカナの汚染とガンの発生 (2014-02-11)

中部大学・武田邦彦教授のブログより転載
引用元: http://takedanet.com/2014/02/post_a56b.html

東京電力から海に出ている水にストロンチウム500万ベクレル(1リットル当たり)が検出されたと発表されました。これは規制値の16万倍ですから、「規制値の何倍か?」という程度も超えている数値です。

また、福島原発から毎日、空気中に漏えいしている放射性物質量は明らかにされていませんが、おそらく数1,000万ベクレルから数億ベクレルと推定されます。またいったん土の上に落ちた放射性物質の再飛散による被ばくは事故当時の2分の1ぐらいと考えられますが、それでもかなりの量になります。

一方、福島県の医師団によりますと、相変わらず福島の子どもの甲状腺がんは増え続け、この一年で、甲状腺がんが26人から33人、疑いのある子供が32人から32人に増えた。通常の患者数の約10倍程度になります。

医学的に言えば「通常」というのが良く分からないので、まだ確定的ではありませんが、福島の医師団が言うように「これは原発の被曝の影響ではないと考えられる」ということでもありません。それも根拠がないからです。科学者や医師は人の健康に関することを「自分の感でそう思う」と病気になる可能性のあることを言ってはいけないのです。その時には勇気をもって「わかりません」と言うべきです。

このような状態の中で、現実的にどのようなことに注意をするべきでしょうか? あと2年程度は福島の状態を見ながら、子供のこと、家族のことを考えてもう少し注意をするべきと思います。

ポイントは、サカナ、お米、山や川のもの、タケノコ類などの食材です。サカナは千葉沖以北の、千葉、茨木、福島、宮城、岩手、青森の太平洋側、北海道の太平洋側で、遠洋ではない近海から取れた魚は食べないほうが良いでしょう。

すでにセシウムだけは測定され、北海道、青森あたりは安全ですが、ストロンチウムが測定されていません。「測定しなくても大丈夫」と言っている人がいますが、それは「測定したくない。ストロンチウムが入っていても売れないと困るから安全という」ということです。

ストロンチウムは魚の骨から体に入り、人間の骨に沈着して白血病などを起こします。

二番目はお米です。お米は食材としてはそれほど汚染されていませんが、なんといっても毎日、もっとも多く食べるものです。普通の細菌やウィルスの場合は、どんなに少量でもある食材が汚れていれば、それが体内で増殖しますので、危険ですが、放射性物質は増殖しませんから、「大量に食べるものに注意」していれば、少量のものは大丈夫ということです。

そこでお米はできるだけ西の方のものを選ぶことです。2011年に収穫された福島などの汚染米がどこにいったのかまだ明らかになっていません。

山のイノシシ、川のアユ、シイタケなどのタケノコ類も少し待ったほうが良いでしょう。シイタケでも大丈夫なものもありますが、「安全だ」として販売されているもののベクレル(汚染度;セシウムとストロンチウム)を表示しているシイタケはありません。ぜひ、生産者の方には「自分の儲けより、お客さんの健康」を第一にしてほしいと思います。

また事故当時ほどでもないので、マスクは風の強い人か、花粉症だからついでにという程度でやるのが良いと思います。また1階、2階で洗濯物を干した場合で、風が強い場合は、簡単に外でパタパタとやって取り込めば、これも被曝量を3分の1とか5分の1に減らすので、病気の可能性を減らす。

いずれにしてもストロンチウムが規制値の16万倍というのを厳しく考えて、上手に食材を選ぶ時期と思います。

(平成26年2月11日)
武田邦彦