2014-02-16

「C」引力



   横浜での展示会 - コシナのブース? 「ZEISS」の看板を掲げたブースにて、「C」の付くCarl Zeissレンズ3本の試用と、Voigtländerのレンズ1本をで試写させて頂くことができた。
   初めて使った C-Sonnar F1.5/50mm、これは面白い写りだった。ただ被写界深度が浅いの云々にとどまらず、背景のボケ味の不思議なこと。 さすがにZeiss、ボケは二線ボケのようなうるささはなく、遠近感、立体感を残しながら、それらが主張するでもなく、その頃合いは違和感なく「絵」として画面全域が一体になるようにピントを外れてゆく。
   コントラストも程よくあり、Summicronのような画面全体の均一感とはまた違った全域の「一体感」。ハイライトはすぐに飛ばず、色の偏りも少ないようで、撮影データはPhotoshop上でもよく粘ってくれそうな印象を持った。
   撮り方としては、「まなざし」という言葉が似合うような向き合い方が、目や手に馴染んで心地よさそう。


   C-Biogon F4.5/21mm - こちらは数度目の試写になる。 何と言ってもカラー・バランスにクセが無いという感触と、ピントの合ったところのシャープな描写、それでいて全体的には柔らかいというこのレンズの特色は、例えば街並を撮れば、客観的な街の風景のなかに人々の日常をそれとなく醸し出す、「風景の証人」とでも言い得られそうな「視線」にあるように思える。

   C-Biogonの"C"は、"Classic"に由来すると聞いたことがあるのだが、コシナに電話した時に、何気なく「クラッシック・ビオゴン」と呼んだところ、相手は少し間をあけ、「シー・ビオゴン、はい。」と言い直していた。
   後に目にした物の本には、「"C"はコンパクトの"C"とも、クラッシックの"C"とも言われているが」とあった。
   いずれにせよ、C-Biogon 4.5/21、C-Biogon 2.8/35、C-Sonnar 1.5/50のそれぞれは、旧来の銘レンズの設計を踏襲している。 コシナのウェブ・サイトには「天才レンズ設計者、ルードヴィッヒ・ベルテレにより生み出された...」とあり、この3本は、繊細でありながらしっとりしたシャープ感と、優しく懐の深い光と色の距離感を表現する。 レンジ・ファインダーと言えどファインダーを覗くとその視線に立つわけで、そこが最も惹かれるポイントだと感じる。

   VoigtländerはColor-Skopar 25mm F4Pを試させて頂いた。
   こちらはVoigtländerらしく、実にシックな写りだった。 ファインダーに現れたのは24mmの枠だろうか、その枠にピッタリの範囲で撮影できる使い勝手は、同じく広角系の21mmやそれよりも広い画角のレンズでは味わえない手軽さに思える。 撮るものに対してレンズの焦点距離は、非常に大事な要素なので、「手軽さ」でまとめてしまうのは乱暴ではあるし、例えば21mmと25mmの「4mm」という差異は、広角域にとっては意外に大きかったりする。 それでもこのコンパクトさといい、レンジ・ファインダー・カメラ本体のファインダーで事足りる機動性は、様々なひらめきや意欲をもって撮影へと駆り立ててくれそう。